nを3以上の自然数とする。

x^n+y^n=z^n

を満たす自然数の組x,y,zは存在しない。

 有名なフェルマーの最終定理だ。(実際はこの時点では証明されていなかったわけだから、フェルマーの最終予想という人も多い。でも、一応フェルマーは証明したって言ってるんだから定理でいい気がする)1650年頃、フェルマーはディオフォントスが書いた名著「算術」って本を読みながら数学の研究をして、この定理を考えた。実際に彼の使っていた「算術」って本はめちゃくちゃ書き込みだらけだったらしい。んで、書き込みだから大雑把なことは書いてあったけど、いろいろな定理やその証明をほとんど論文として世に発表してなかった。なんといってもアマチュア数学家だったからね。フェルマーは最終定理のメモ書きの横にこう記した。
「私はこの命題の真に驚くべき証明を持っているが、余白が狭すぎるのでここに記すことはできない」
まったく人をなめてる。w
 この定理が正しいことを証明することはちょっとやってみると、ぜんぜん見当もつかない。でも、適当な数を3つ入れて間違っていることを証明することは、簡単な気がしてしまう。なにせ、適当な数を入れて式が成り立ってしまえばおしまいなのだから。ここが、この定理の罠だね。
 で、彼の死後に息子が落書きをちょこっと整理して本として出版した。そこには未証明の定理がたくさん書いてあったんだけど、世界の数学者たちはどんどんと証明していった。でも、最後の最後まで証明できなかったのが上の定理。だから最終定理。こんなピタゴラスの定理の拡張版みたいなやつが、そんなに難しいのか?って思うけどね。でも、この定理が証明されるまでに約350年もかかった。
 そう、結局は証明されたわけだ。1994年9月19日にアンドリュー・ワイルズによって。もちろん、ワイルズの業績は素晴らしいと思うが、それにつながるまでに350年間にわたってこの問題に取り組み続けた数学者たちが素晴らしいと思う。オイラーゼータ関数を考え、アーベルが5次方程式の解の非存在を証明し、ガロアが環の概念を作り、楕円理論→谷村と志村による谷村・志村予想と繋がった。これらのどれがかけてもワイルズは定理の証明ができなかったと思う。一生をこの定理の証明だけに費やしても生きているうちに自分が正しかったかどうかを知ることができない。数学は大航海時代の冒険と同じでロマンがあると思う。